病院に掛かった後、ほとんどの場合、薬は隣接した薬局に貰いに行きますよね。
また、道路の向かい側であったりもします。
体調が悪くて歩くことすらままならない状況だとしたら、建物が別々に設けられている事がものすごく不便に感じます。
しかし、数十年前までは、病院と薬局は別ではなく、病院内で薬を貰えていました。
「あれ?なんでいつの間に別々になったの?」
と、疑問に感じている方も少なくないはずです。
実は、この病院と薬局が別々になった理由には、深い理由があったんです。
今回は、そんな病院と薬局が別々になった理由。
併設されている場所と別々な場所があるのはなぜなのか。
薬を貰う薬局はどこでもいいのか。
など、病院の不可解な部分について紐解いていきます。
病院と薬局が別々な理由は?
病院と薬局が別々になっている事を「医薬分業」と言います。
この医薬分業の歴史は、世界的に見るとかなり長いものなのですが、日本ではまだまだ数十年の歴史しかありません。
ヨーロッパでは1240年頃から医薬分業が発達したのですが、日本では1995年頃からですので、歴史としてはとてもまだまだ浅いものです。
もともと、1995年以前までの日本では、薬は病院が処方していました。
今は、薬を貰う時は病院の外を出て、隣の薬局などに足を運んで貰いに行きますよね?
「歩くのめんどくさいし、病院内に薬局作ればいいのに...」
と、皆さん思った事はあるかと思います。
しかし、わざわざ薬局を外に作ったのには理由があります。
昔は、病院側と言うのは、薬を出せば出すほど儲かりました。
患者が知識がない事をいいことに、とにかく
「これ飲んどけば、大丈夫ですよ~」
と、わざと高価な薬を出したり、余分に必要のない薬まで出していました。
そうする事で、病院側は稼ぐ事が出来るので病院にとってはメリットでしたが、もちろん患者側からしたらたまったもんじゃありませんよね。
しかも、医者は大量の薬を出すことによって手に負えなくなり、管理体制もずさんな状態でした。
そこで、患者の薬漬けを回避する為に、1995年に厚生労働省が新たな対策を施行しました。
それが、病院と薬局を別々にして、病院が処方箋を出して、それが本当に正しいものなのか、適切な量なのかを、薬局の薬剤師さんが判断し、薬を処方するようにしたのです。
さらに、病院内で処方した薬(院内処方)の販売価格を安くして利益が出ないようにし、反対に薬局で処方した薬(院外処方)は利益が出るようにしました。
これによって、
と、双方にとってのメリットとなりました。
もうちょっと詳しく、医薬分業のメリットとデメリットについてお話していきます。
医薬分業のメリット
先程も述べましたが、患者側は適切な薬を処方してもらえるので、薬漬けを回避する事が出来ます。
それにより、余計な出費もせず、健康な身体を手にする事が出来ます。
また、病院側が診断も薬も全てを管理していた時代に比べて、病院は診断のみになったので、心と肉体にも余裕が生まれて医師の負担が減り、しっかりとした判断が出来るようになりました。
医薬分業のデメリット
逆にデメリットとしては、患者がわざわざ薬を貰いに行く手間が出来た事ですね。
本当に体調が悪い時は歩くのもしんどいです。
出来れば、診断後に病院の受け付けでパッと貰って帰りたい所ですよね。
また、薬剤師の技術料などが調剤費に上乗せされてしまう為、結果的に安く抑えられるはずが、逆に薬の値段が高くなり、患者の金銭的な負担にもなりました。
国が医薬分業を施行した理由
しかし、国にとってもこの施行はメリットとなるはずでした。
私達は、健康保険により3割負担で病院に通い、薬を貰う事が出来ます。
残りの7割は、国(税金=健康保険料)が負担してくれますよね。
医薬分業施行前の1995年以前までは、医者は薬を出せば出すほど儲ける事が出来ましたが、その大量の薬の投与により医療費が増えると、国が支払う税金が増えてしまうので財政は圧迫してしまいます。
そこで、財政健全化も見越して、医薬分業が施行されました。
しかしながら、現代は超高齢化社会。
結局、高齢者の医療費が財政を圧迫している現状にあります。
さらには、前述したように薬剤師の技術料が上乗せされ、結果的に医療費増大で財政が圧迫しているので、国の施策は失敗に終わりました。
病院と薬局が一緒の所もあるの?
古くからある個人病院では、薬も一緒に出している場所もあります。
実は、
「病院と薬局を別々に作りなさい」
というルールはありません。
ただ単に、薬局で処方した方が病院側が儲かるから皆そうしているだけなんです。
古くからある個人病院に足を運んでみましょう。
普通に受け付けで渡してくれます。
薬局はどこでもいいの?
病院を出て、隣接している薬局に行く必要はありません。
しかし、現代は門外薬局で溢れかえっています。
大きな病院の周辺には何十個もの薬局があるので、わざわざ遠い場所の薬局に行くこともそうそうないでしょう。
ただ、薬局はやはり周辺の病院に合わせて薬の在庫を持っているので、耳鼻科の隣の薬局には耳鼻科に特化した薬があるというように、なんでもいろんな薬があるという訳ではありません。
理由があって、隣接した薬局に行けない場合は、病院で貰った処方箋に記載されている薬があるかどうか、行こうとしている薬局に事前に伺ってみましょう。
ちなみにですが、実は、全国的にコンビニの数よりも、薬局の数の方が多いという事実があります。
それだけ、薬局というのはビジネスとして“病院の近くに建てただけで簡単に儲かる事が出来る”のです。
もちろん、これに関しては社会問題になっているので、国が早急に対策を進めています。
豆知識程度に覚えておきましょう^_^
まとめ
・病院と薬局は、国が推進した医薬分業によって別々になっている
・医薬分業により、患者は適切な薬を貰え、病院側は管理が楽になった
・病院が処方箋を出し、薬局で薬を処方して貰う事で利益を出す仕組みを国が作った
・しかし、全国的に薬局が増えすぎているという問題もある
・結果的に薬剤師などの技術料が上乗せされて患者の金銭的な負担も増えた
・最終的には、医薬分業で一番得をしているのは薬局をチェーン店化している経営者らという事になる